ゴール州 (Wilāyat-e Ghōr)
現在の主要な民族であるアイマーク人はテュルク系遊牧民の出自を持つと考えられているが、古代にこの地方に住んでいたのはインド・ヨーロッパ語族のイラン語群の言語を話すイラン系の山岳遊牧民であり、イスラム時代の文献ではゴール人(グール人)と呼ばれる. イスラム帝国の支配がこの地方に及ぶ直前には、ハリー川を下った先にある大都市ヘラートを支配するサーサーン朝ペルシア帝国に従っており、サーサーン朝が倒されてヘラートがムスリム(イスラム教徒)の支配下となってから遠からずイスラム教に改宗していった.
のちにゴール朝を興すシャンサバーニー族のシャンサブ家の先祖は、ゴール朝の滅亡後にまとめられた年代記によると、第4代正統カリフ、アリーの時代にイスラムに改宗し、アッバース朝のハールーン・アッ=ラシードのときゴール地方の領主に任命されたことになっている. 確実な歴史においては11世紀頃からゴール北部のハリー川上流域にシャンサバーニー族の土着王国があらわれ、ガズナ朝と熾烈な抗争を繰り広げ、強大なガズナ朝の前に服属を余儀なくされた.
12世紀の半ばになると、シャンサバーニー家のゴール王国は独立を達成し、世紀後半の英主ギヤースッディーン・ムハンマドのもとでホラーサーンからインド亜大陸に至る広大な領域を治めるゴール朝に発展する. ギヤースッディーンはヘラートを征服して新しい拠点としたが、本来の本拠地であるゴールのフィールーズクーフにもその繁栄は及び、数多くのモスク(礼拝所)やマドラサ(学校)がゴールの山岳地帯の只中に建設された. そのギヤースッディーンの時代に建てられた建造物のひとつとみられるのがハリー川の支流の傍らに立つ世界遺産ジャームのミナレットであるが、本来フィールーズクーフにあった多くの建造物は廃墟となっている.
13世紀にはゴール朝を滅ぼしたホラズム・シャー朝による支配を受け、次いでホラズム・シャー朝を滅ぼしたモンゴル帝国の支配下に入った. ゴール朝の時代にアフガニスタン西部に散ったゴール人たちはヘラートにクルト朝を立て、モンゴル帝国のイラン政権であるイルハン朝に服属する地方政権となる一方、山岳地帯にはモンゴルの駐留軍が入り込んでいった. モゴール人はこの末裔とみられ、またハザーラ人もモゴール人とは別の民族とみなされ、モンゴル語を話していた痕跡はないものの、モンゴロイドの形質がはっきりとでた容貌をしていることから、モンゴル帝国の軍隊と何らかの関係があるとも言われている.
その後、クルト朝を滅ぼしたティムール朝の支配、次いでインドのムガル帝国とイランのサファヴィー朝によるアフガニスタンの山岳地帯の争奪、パシュトゥーン人によるアフガニスタンの建国を経て、この地方の主要な住民はイラン系のゴール人よりもテュルク系の出自をもつとみられるアイマーク人になっていったとみられ、近代以降にはゴール人と呼ばれる人々は知られていない. また言語的には、中央アジアの共通語であるペルシア語の一種ダリー語が浸透し、アイマーク人は完全に、モゴール人もほぼ完全にダリー語を日常語とするようになっている.
地図 - ゴール州 (Wilāyat-e Ghōr)
地図
国 - アフガニスタン
アフガニスタンの国旗 |
アフガニスタンは多様かつ波乱な歴史を紡いで来た地域に建つ国家である. 少なくとも5万年前には現在のアフガニスタンには人間が住んでいた. 9000年前に定住生活が始まり、紀元前3千年紀のインダス文明(ショルトゥガイ遺跡)、オクサス文明(ダシュリジ遺跡)、ヘルマンド文明(ムンディガク遺跡)へと徐々に進化していった. インド・アーリア人がバクトリア・マルギアナ地方を経てガンダーラに移住し、ゾロアスター教の古代宗教書『アヴェスター』に描かれている文化と密接な関係がある 鉄器時代のヤズ1世文化(紀元前1500 - 1100年頃)が興った. 「アリアナ」と呼ばれていたこの地域は、紀元前6世紀にアケメネス朝ペルシャ人の手に落ち、その東側のインダス川までの地域を征服した. アレキサンダー大王は前4世紀にこの地域に侵入し、カブール渓谷での戦いの前にバクトリアでロクサネと結婚したが、アスパシオイ族やアサカン族の抵抗に遭ったという. グレコ・バクトリア王国はヘレニズム世界の東端となった. マウリヤ朝インド人による征服の後、この地域では何世紀にもわたって仏教とヒンドゥー教が栄えた. カピシとプルシャプラの双子の都を支配したクシャーナ朝のカニシカ1世は、大乗仏教が中国や中央アジアに広まる上で重要な役割を果たした. また、この地域からは、キダール、エフタル、アルコン、ネザーク、ズンビール、トルキ・シャヒスなど、様々な仏教王朝が生まれた.
通貨 / 言語
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