アイスランド語

アイスランド語
アイスランド語(アイスランドご)は、インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派北ゲルマン語群に属する言語. 使用範囲はアイスランドのみで、使用人口は約30万人.

アイスランドを「氷島」と表記することから「氷島語」略して「氷語」や「氷」とも言う.

9世紀にノルウェーから移住したヴァイキングがもたらしたものであり、他の北ゲルマン語(デンマーク語・ノルウェー語・スウェーデン語)の中ではノルウェー語と一番近い.

他の北ゲルマン語が失った3性(他の北ゲルマン語は両性名詞(共性名詞)と中性名詞だけ)や格変化、人称変化などを保持しており、また格変化などの必要性により、英語やフランス語などからの借用語を極力排しているため、古風な色合いを強く残している.

アイスランド語の歴史は、ヴァイキングの一派であるノース人(及びブリテン島やアイルランドのケルト人)がアイスランドに初上陸し、その後定住し始めた874年に始まる. 当時のノース人は北ゲルマン語の1つである古ノルド語の西方言(古西ノルド語)を話しており、これが言語の歴史的変化によって古アイスランド語、そして現代アイスランド語と呼ばれるものへと変化していったものである.

ただ、中世から言語が変化してきたとはいえ、音韻を除けばほとんど変化しておらず、特に文法の基本構造にいたっては何一つ変化していない. そのため、現代のアイスランド人は、現代と中世における言葉遣いの違いを少し把握しさえすれば、中世に古ノルド語及び古アイスランド語により編纂されたエッダ(Edda, 北欧ゲルマン神話や英雄伝を題材とした詩歌の口承文学)及びサガ(saga, 主に当時のヴァイキングによる歴史的活動を年代記風にした散文形式の口承文学)が読解できるといわれる. これらの古典作品は文学的に大きな価値があるだけでなく、言語学・歴史学・文化人類学などの分野においても貴重な資料である.

このようなアイスランド語の保守性は、ルーツを同じく古ノルド語とする大陸の北ゲルマン諸語(デンマーク語・ノルウェー語・スウェーデン語)と比べると顕著であり、大陸の諸言語が揃って動詞の人称変化や名詞の曲用(格変化)などの複雑な文法的性質を失っていった(屈折性の退化)のに対し、孤島の言語という地理的要因によりアイスランド語は大陸諸語のような変化を被らず、古ノルド語のもっていた文法の複雑性をそのまま保存している.

現代では、言語の保守性を保つなどの理由により、海外から続々とやってくる外国語の語彙に対してできるだけ外来語として吸収しようとせず、語彙を意訳した上での造語がよく行われている. 例えばテレビを意味する "sjónvarp" は、英語 television などからの外来語ではなく、sjón(「風景」「見ること」、英語:sight)と verpa(投げる)からなる造語であり、「投影機」と意訳してできたものである. ドイツ語で、fern(「遠く」、far)とsehen(「見ること」、see)からテレビを意味する Fernseher が造語されたのと同様である.

  • アイスランド
    アイスランド(Ísland イーストラント)は、北ヨーロッパの北大西洋上に位置する共和制国家. 首都はレイキャヴィーク. 総人口は約35万5620人. グリーンランドの南東方、ブリテン諸島やデンマークの自治領であるフェロー諸島の北西に位置する.

    アイスランド島を主な領土とする島国で、イギリスとのタラ戦争の舞台にもなった漁業基地であるヴェストマン諸島、北極圏上にあるグリムセイ島などの周辺の島嶼(とうしょ)も領有する. 高緯度にあるためメルカトル図法の地図では広大な島のように描かれるが、実際の面積は10万2828平方キロメートルと、フィリピンのルソン島(10万4688平方キロメートル)や、韓国(10万210平方キロメートル)とほぼ同じである. グレートブリテン島(約22万平方キロメートル)の約半分、または日本の北海道と四国を合わせた程度の面積である.